家族性高コレステロール血症とは?

コレステロールと高脂血症(脂質異常症)

イヌイ薬局様より提供

血液検査でおなじみのコレステロールという言葉。植物にも多少は含まれますが、動物細胞の構成物質として必要な油脂成分であり、身体のあらゆる組織細胞に含まれる重要な構成成分なのですが、成人病の原因要素として悪いイメージで普及していますが、身体には欠くことの出来ない必要な物質なのです。 コレステロールは細胞構成物質ですから、必要以上に抑制する場合も健康を害することになりますが、それは非常に例外的な事でしょう。調整機能が狂って循環する量が過剰となってしまうことが高脂血症という病気で、動脈硬化などで血流障害を起こし生活習慣病の因子となることを知られてきたのが、コレステロールです。

高脂血症と遺伝性疾患

動物つまり食物に含まれていますので、食事から摂取するものと思われがちですが、身体の組成に必要なモノですから、通常は体内で作られるのです。外から吸収する量と体内で生成される量の調整機能をもつのが、肝臓です。体内で過剰となったコレステロールを捕獲して肝臓へ運ぶ役目をするのが、LDL受容体です。その機能が遺伝的・生まれつき欠損して不足していたり、全くない為に体内にコレステロールが溜まってしまいます。この遺伝子疾患は、『常染色体性優性遺伝』ですから、男性も女性もなります。 常染色体性優性遺伝ですから家系・血族に受け継がれる中、その半数以上が病気として異常が認められる悪性疾患となります。片親からの遺伝を「ヘテロ」、両親双方から遺伝した重症例を「ホモ」と呼び、「ヘテロ」は500人に1人と一般的レベルですが、「ホモ」は100万人に1人と超稀少難病なのです。遺伝病としては血友病や筋ジストロフィーが有名ですが、あちらは劣性遺伝ですので「ヘテロ」という概念はなく、発症確立は低いです。 優性遺伝で大多数の人に受け継がれる疾患でありながら、この疾患は国民に余り認知されていません。家族や本人が知らないうちに、誕生時より冠動脈疾患や脳梗塞の危険のある動脈硬化が、砂時計の如く、少しずつ少しずつ進行してしまう。誰も気がつかない(新生児検診「新生児マススクリーニング」に含まれておりません)だけに、悲しい運命の元に生まれたのが、『家族性高コレステロール血症』の患者です。

家族性高コレステロール血症の“発見”

通常コレステロール値が250mg/dlを超えると危険といわれますが、『家族性高コレステロール血症』の患者は生まれつき300以上、600〜1000と異常に高い値になります。私も発病時は1000近く、薬剤などで治療を開始した幼児期からLDLアフェレーシス治療を開始する成人までは600ほどでした。人間、無知というもの程恐ろしいものはありません。幼児期から異常値であると、危険性を意識しなくなります。だって子供時代には動脈硬化という怖い病について何も知りませんでしたから…。 この病気の特徴は、もちろん血液検査で異常発見できますが、小児の血液検査の機会は少ないでしょう。他にはアキレス腱が太く・堅くなったり、皮膚やまぶたに、黄色腫と呼ばれる黄色い浮腫・コレステロールのかたまりができたりします。よく動かす部分にコレステロールが溜まりやすいからか体中の関節に発症します。しかし黄色腫での発見は、悪性のホモ患者にほぼ限られます。私はLDLアフェレーシスを始めるまでは、皮膚科にて治療していただいておりました。

いろいろな治療法…根治療法はナシ!

1.食事療法
どんなレベルでも原則として食事療法が最初です。上述のように体内生成物質なのですから「食事を気にしても…」と考えがちですが、そんな油断は許されません。厳しい食事制限ですが外食でもメニューを考慮すれば大丈夫?しかし甘美なメニューの中から自制して選択というのは会食の場では非常に難しいでしょう。 禁止されるものは、最初に説明したような理由でコレステロールを多く含む動物性脂肪。それは肉(特にレバー)・生クリーム・鶏卵・魚卵・バター、ラード…ほか。鶏卵や生クリームがダメですから、ケーキ類などの洋菓子はもちろん、ラードは揚げ物はもちろん、インスタント食品など多数の食品に含まれていますから要注意です。 逆に薦められる食品は、植物由来食品ならどんな料理法でもOK。天麩羅などの油料理やサラダに使うマヨネーズも、今はコレステロール低下を唄う食品が市場に出てますので、家庭料理では問題ないでしょう。肉は鶏のササミ。魚は白身魚おもに青魚。そして海藻類。簡単にいえば江戸時代以前というより欧食文化が普及する前・戦前の日本古来の食生活い(いわゆる和食)なります。欧米食が普及した現代では寂しい食生活ですね。しかしこの食事療法は重症患者はもちろんですが、一般の高脂血症(今は脂質異常症ともいいます)の患者さん達にも必要です。有効な薬剤があるからと油断してはいけません。

2.薬物療法
35年ほど前に開発されたスタチンという薬剤のおかげで、一般の高脂血症患者はもちろん、軽症ヘテロ患者にも福音がもたらされました。この薬は肝臓でのコレステロール合成を低下させ、調整機能のためのLDL受容体を活発化させて、LDLコレステロールの排出が促進されます。LDL受容体に働く為に、これが全くない重症ホモ患者には効果がないのです。

透析機械本体
3..LDLアフェレーシス
この治療法が発明されたのは四半世紀ほど前でしょうか…。見た目は透析と同じような機械・原理です。身体から血液を体外に取りだして浸透圧の原理でコレステロールだけを排除するカラムを通して、LDLコレステロールを取り除きます。洗浄されて綺麗になった血液は再び身体に戻されます。採血管の痛みぐらいしか患者の負担はなく、ベッドで横になる必要もないほど身体は楽です。軽症者なら月1回か2回。しかし重症ホモの場合は保険限度額の週1回治療でも、2・3日で健康人の基準値をオーバーしてしまいますから、本当なら週2回は必要なのですが、今は保険の認可されてない為に、金沢大での試験例が1例あるのみです。これも腎臓透析同様に体内臓器がはたす役割を機械に任せている為に、根治療法とはいえず一生続けなければなりません。

4.肝臓移植
子供のホモ患者に対して、ヘテロの両親からの生体肝移植が2例あります。ホモからヘテロと病状がある程度回復するので現状では最大最良の治療法ですが、動脈硬化など血管内が汚染されていない子供に対してこそ有効な手段であり、既に動脈硬化が進んだ患者に対しては…どうでしょうか?

5.遺伝子治療
家族性高コレステロール血症は先に申しましたように「遺伝子疾患」です。これこそ究極の治療法ですが、現状では世界の研究者の中でも5例試行されたものの、成果はまだありません。今後の更なる研究の進むことを祈り・待つしかありません。

6.アポ蛋白Bに対するアンチセンスRNA療法
LDLの主要蛋白であるアポ蛋白Bの合成に関わるRNAをブロックする治療法で、目下開発中です。臨床効果が既に発表され、近い将来日本でも臨床試験が始まるでしょう。

この『本疾病の説明』を書くにあたりまして、日頃から遠方より御支援下さいます、金沢大学大学院医学研究科脂質研究講座の馬渕宏特任教授に、御助力頂きましたことを、あらためて深く感謝いたします。